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6 ◇問い詰める

Author: 設樂理沙
last update publish date: 2026-04-08 10:15:40

      

 帰国した翌日、旅の疲れも取れ頭もすっきりクリーンになったところで

異国の地にいる夫にメールを送った。

 日曜日だから、ちょうどよかった。

 それとも女と一緒でニャンニャンするのに忙しいだろうか! 

 ええい、ままよっ!

 メール投下。

『休日だけど、今何してる?

 いろいろと忙しい?

 私からの家族一緒にそちらで暮らす提案がこれといった理由もなくあなた

から一蹴されて、腑に落ちなくて……それであなたに会いに今回行ったんだ

けど……その理由が分かっちゃったよぉ~? フフン~』

 さてさて、すぐに返信がくるだろうか。

 流石にまだ午前中だからか、思ったより早く返信があった。

『突然訪ねて来て俺を驚かせたと思ったら、今度は日本から訳ありなメールで

俺を驚かせるんだ?

 言ってる意味がわからん! マジわからんわ。何それ?』

『そうなの?

 おかしいなぁ~。

 悲しすぐるぅ(´;ω;`)

 私は顔文字を付けて送信した。

『なんか、離れてるからいろいろ考えすぎるんだよ。

 前も言ったけど、暮れには帰るからね……絶対。

 だからあんまりあれこれ悩まないように! 』

 悩まないように?

 ナヤマナイヨウニ?

 夫に浮気相手ができて、それを知って悩まない妻がいたらお目にかかり

たいもんじゃ、いや(オチツクノヨ)……お目にかかりたいもんだわ。

『現地妻……東南アジアに単身赴任する人って現地妻作るのは

よくあることなの? 』

 返信が止まった。

 そりゃあそうだ。

『ねぇ、あなたの周りに現地妻作ってトラブル起こしてる人いないの? 』

『さぁ、どうだろう。

 まだこちらに赴任してきて1年も経ってないから』

『そっか、そうだよねぇ?

 自分のことでいっぱいいっぱいで人のことなんて興味もないよね?」

『なんか、変だよ?

 どうしちゃったんだ? 』

『変なのはあなたよ。

 知ってるのよ……わたし』

『なにを?』

『何だろう?』」

『押し問答したいの?  まさかね』

『あなた、浮気してるでしょ? 』

『してない』

『とぼけても無駄よ。

 証拠押さえてるからね。

 取りあえず、今の相手と別れてください』

『バカだなぁ。

 別れるもなにも、そんな相手いないんだから』

 別れて下さい、私はそうあなたにお願いしています。

 このこと、忘れないで。じゃあ』

『君の勘ぐり過ぎだから、落ち着いて』

 言われなくたって落ち着いてるわ……よ。

 たぶん。

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         夫の赴任先は東南アジア。 降り立ったのは近代的としか形容のしようのないクアラルンプール国際空港。 すごい空港の造りや雰囲気にも驚かされたけれど、市内を走るタクシーから 眺める景色にも驚きを隠せなかった。 まさか自分の暮らす街よりも洗練されていて遥かに近代的で都会的だなんて、 私の想像していた東南アジアという固定概念が大きく崩れ去った瞬間だった。 ただ、どこの国でもありがちな田舎街のイメージが大き過ぎただけのこと なんだろう。 そりゃあ国際空港と名が付くのだからこんなものよと、思い直したのだった。 近代的な大都会と熱帯の大自然が融合するマレーシア・クアラルンプール。  この街だって、ちょっと高層ビル群を離れると、私の脳内に存在するイメージ の街並みである何かしら裏町的で庶民的なお店や古い家々が立ち並ぶ光景が 見られるんじゃないかしら。  空港から駅員に聞いてチケットを買い、エアトレインに乗って入国審査の場所 に。 待つこと20分、それからKLセントラル駅までの往復チケットを買い、乗車する こと30分。 駅からは流石に公共の乗り物は止めて夫の暮らす家までは タクシーを使うことにした。 30分ほどで夫の住むコンドミニアムとかいう住居にようよう着いた。 朝一の便で飛んで来て、15時30分ちょい過ぎを時計の針が指している。 はぁ、家を目の前にして急に緊張の糸が切れたのか、どっと疲れを感じた。 なんか、想像していた住居ではなかった。  私はなんとなく小ぶりの小さな一軒家か二階建てで長屋風になっている テラスハウスのようなものを想像していたのだ。   だが日本でいうところの高層マンションだった。  周りも軒並み高層ビルだらけだ。            ◇ ◇ ◇ ◇  突然の来訪に、夫は全身で驚いた。  こちらがビビるほどに。  そして私にしてみればどうして? と思うようなゆがんだ笑顔での出迎え だった。  それは必死で普通を繕おうとしているのだけれど、心を……どうしても 平常心に戻すことができず困惑している様を隠しきれていない人の表情 だった。  だから、またひやりとした正体のしれないモノが、私の胸の中を襲った。  メールで感じたものがここにもあったのだ。  一体その正体はなんなのか?

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